Fall -誘拐-
「・・・取り押さえられるもんなら、
取り押さえてみろよ?」
「なんだと・・?」
「その脂ぎったメタボ腹に負けるほど、
俺は落ちぶれちゃいねぇぞ?」
「・・・!!」
「堺ちゃんの上司の多村が許可しないのでしたら・・
多村の上司の私が許可すればいいですか?」
「「!?」」
俺と狸の間で一触即発の空気が流れた瞬間、
一気に背筋がピンと張る・・
聞き覚えのあるバリトンボイスが響いた。
「ひ、平松刑事部長!
お戻りでしたか・・。」
「多村・・・。
一応彼も君の元 部下なんだから、
もう少し可愛がってあげなさい。」
「はっ!失礼しました。」
「神野君、資料保管室への入室を許可しますが・・
多村課長の言い分も理解してあげてくださいね。
何を持ち出してそれをどう使ったか、
あとで私に報告するように。」
「はい。ありがとうございます。」
腰を45°曲げてる間に、
狸を追い払ってくれた。
保管室の扉の前、二人きりになったところで平松刑事部長が一歩俺に近づく。
「話はヒデ君から聞いています。」
「はい・・!」
「西平の審理再開までもう時間がありません。
君達の推理を、そして彼と東条さんの正義を証明するには、
主犯を突き止めて、
逮捕するしかありません。」
「必ず捕まえます。それに・・・。」
「それに?」
「リカさんはきっと生きてる・・。
だから彼女も必ず助けます。」
「・・頼みましたよ・・神野刑事。」