Fall -誘拐-
「しかし月本警部。そもそも・・どうして徳永先生が主犯だと・・?」
『先程申し上げた通り、神野くんとA~Dの共通点を隅から隅まで洗いました。
そこで見つかったのが彼らの【往診歴】。
規模の大小はありましたが、
A~Dは当時、
自身や家族がそれぞれ怪我や病気を煩い、
【東大病院】で手術を受けていました。』
「東大病院・・・?」
『アメリカから帰国した徳永先生が、ヨコハマ総合病院の前に務めていた病院です。』
「という事は、徳永はそこで金に目が眩みそうな人間をピックアップしたと?」
『元を取り戻すどころか、治療代を差し引いても十分なお釣りがくる額を提示すれば・・
A~Dは誘惑に負けてしまったんでしょう。
ヨコハマ総合病院ではなく、
東大病院時代の患者を利用したのも徳永先生の狙いが2つあったと考えます。
第一に、もし共犯者達が捕まったとしても、
東大病院から自分にまで辿り着く事は無いと考えた。
現に・・“東大病院に勤務していた”と、
本人の口から聞いていたはずの神野くんはピンときていませんでしたから。」
「・・・・・・・・・・。」
『第二に、そもそも都内在住の人間を犯罪に加担させれば、
“神奈川で発生した事件”の、“都内に住む容疑者”という構図が出来上がります。』
「・・神奈川県警と・・警視庁・・。」
『犬猿の仲の両者が協力するはずがないと、タカをくくっていたかもしれません。』