Fall -誘拐-
「東条さん。これが脅迫文です。」
黒部さんの元を一旦離れ、手袋をはめながら新谷が差し出してきた紙を受け取る。
「これはいつ?」
「黒部さんの話では、
夕刊と一緒に入っていたそうです。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
【親愛なる黒部テルヨシ様
まずは連絡が遅くなった事をお詫びする。
リカさんの消息が分からなくなり、
さぞ胸が苦しい夜を過ごしたことだろう。
簡潔に今の状況を述べる。
①リカさんは今、我が預かっている
②彼女の健康状態に問題は無い
③我はこのまますんなりと貴方にリカさんを返すつもりは無い】
「・・・・・・・・。」
3枚に渡る犯人からの脅迫文。
1枚目に書かれたこのメッセージをその通り信じるなら、
まだリカさんは無事だという事か・・。
被害者 黒部リカ。
23歳の会社員。
仕事を終え、
母親が入院している病院に見舞いへ。
そこから・・・彼女は消息を絶った。