Fall -誘拐-
「銃を下ろせ、徳永。」
「!?」
「神奈川県警だ。」
背中から聞こえる声に反応して、突きつけられていた銃口の触覚が消えていく。
ゆっくり振り返ると・・
“刑事”じゃなくて“ヤクザ”って言った方がしっくりくる強面の男達が、
一斉に徳永へ拳銃を構えていた。
「神野さん。遅くなってすみません。」
その中心に立っていた新谷本部長が、
徳永から拳銃を取り上げる。
「新谷本部長、すぐにリカさんを警察病院へ移送お願いします。
徐々に薬を抜いていけば・・リハビリを続ければまた元の生活に戻れるはずです。」
「・・リカさん・・・・・
・・よくぞご無事で・・。」
新谷本部長もベッドに眠る彼女の姿を見て、大体のことは察しがついたようだ。
病院から病院へ。一見すると変だが、
すぐに救急車が手配される。
「神野さんもこれに乗ってください。
至る所から出血しているじゃないですか。」
「ちょっと無理しすぎました。」
「あの自動扉を蹴破るとは・・
・・・・・さぁどうぞこれを。」
「え・・・いいんですか?
俺、警視庁の人間ですよ?」
「この後は我々が責任を持って引き継ぎます。だからこそ、手錠は君からお願いします。」
強面に取り囲まれて戦意喪失したのか、
“チクショウ”とぶつぶつ呟く徳永へ近づく。
「・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・。」
いや・・・やっぱり・・・
「新谷本部長、
やっぱり手錠はあなたから。」
「え・・・。」
「これで・・・
東条警部を弔ってあげてください。」
東条警部・・・。
あなたが命を賭して貫いた正義が今・・あなたの部下の手で結実しましたよ。