Fall -誘拐-
「・・・・・・・・・・・・・・。」
こちらに背を向けた格好になっているので、
西平が今どんな表情をしているかは分からない。
だが・・入廷したときのあの様子から、
恐らく微動だにしない無表情だろう。
「何も無いようでしたら判決に移ります。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
何も・・言わないか・・?
また無駄な抵抗や悪あがきをしてくると思っていたが、最後は男らしく覚悟を決めたか・・。
「では判決を言い渡します。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「主文、被告人を死刑と処する。
理由・・・。」
また一気にざわついた傍聴席に木槌が鳴る。
続けて理由が述べられていくが・・
・・4人の命を奪った罪は重い。
裁判長が読み上げる内容はごくごく普通の理由で、記者達はもう興味が無いのだろう。
続々と退席をして段々と減っていく傍聴席。
恐らくもう少ししたら、
スマホにニュース速報が流れてくるはずだ。
「・・・よって、死刑を以て罪を償うことが妥当とする。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
直立不動のその後ろ姿は、
特に動揺する事なく終始一貫していた。
・・・・もしかしたら、今俺の視界に映る姿が本当の西平だったのかもしれない。
逮捕してから今まで。リカさん誘拐を告白した後の拘置所のやり取り。
どこか・・今が一番“まとも”な姿に見えてくる。