Fall -誘拐-


「・・・・・・・・・・・・・・。」


こちらに背を向けた格好になっているので、

西平が今どんな表情をしているかは分からない。

だが・・入廷したときのあの様子から、
恐らく微動だにしない無表情だろう。


「何も無いようでしたら判決に移ります。」


「・・・・・・・・・・・・・・。」



何も・・言わないか・・?


また無駄な抵抗や悪あがきをしてくると思っていたが、最後は男らしく覚悟を決めたか・・。



「では判決を言い渡します。」


「・・・・・・・・・・・・・。」



「主文、被告人を死刑と処する。
理由・・・。」



また一気にざわついた傍聴席に木槌が鳴る。


続けて理由が述べられていくが・・
・・4人の命を奪った罪は重い。


裁判長が読み上げる内容はごくごく普通の理由で、記者達はもう興味が無いのだろう。


続々と退席をして段々と減っていく傍聴席。


恐らくもう少ししたら、
スマホにニュース速報が流れてくるはずだ。





「・・・よって、死刑を以て罪を償うことが妥当とする。」



「・・・・・・・・・・・・・・。」



直立不動のその後ろ姿は、
特に動揺する事なく終始一貫していた。


・・・・もしかしたら、今俺の視界に映る姿が本当の西平だったのかもしれない。


逮捕してから今まで。リカさん誘拐を告白した後の拘置所のやり取り。


どこか・・今が一番“まとも”な姿に見えてくる。


< 203 / 208 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop