Fall -誘拐-
『神野くんにはいないんですか?』
「・・・・何が?」
『西平にとってのリカさんのような存在です。』
「おいおい・・・野郎2人でピザ食いながら恋バナかよ。」
『たまにはプライベートの話をするのも息抜きになります。
綾瀬さんがいた頃は逆で、仕事の話が息抜きになっていましたが・・。』
「話が広がらなくて申し訳ないけど、彼女はいませんよ。」
『ではこの話は終わりですね。』
「いやいや。ヒデさんはどうなのよ?」
『いますよ。』
「・・・・・・・・・・は!!!?」
『意外と思われるのもしょうがありませんが、そんなに驚かないで下さいよ。』
「あんた彼女いるのか!?」
『はい、います。』
「じゃあなんでこんな所に籠もって生活してるんだよ!!
っていうか、部屋から一歩も出ないのにどうやって!?」
『私だってこの部屋を出る時があるじゃないですか?』
「出るって言ったって・・。
深夜の銭湯・・買い物・・コインランドリー・・・・・・・・!?」
『・・・・・・・・・・・・・。』
「・・・相手は看護師か?」
『さすがの鋭さですね。』
「あんたまさか・・
月に一度の検査とか言っておきながら、
その人に会いに行ってるだけじゃねぇだろうな!?」
『検査を受けているのは事実です。だから“だけ”というのは少し違います。』
「なるほど・・“少し”ね。」
『私がこの病を克服したら、
一緒になろうと約束しています。』
「だったらその人の為にも、
一日でも早く治さないと。」
“ブー ブー”
『・・失礼。
はい、月本です。・・・・・はい・・・・・え?・・・・・・本当ですか?』
「・・・・?」
『・・・・・・はい分かりました。
はい、失礼します。』
「・・・・???」
『・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・。』
「どうしました?」
『分かってはいましたが、やはりこみ上げてくるものがありますね。』
「もしかして・・・?」
『リカさんが、
無事に意識を取り戻したそうです。』
Fall -誘拐-
終