Fall -誘拐-
受話器を置き、この数分で更に疲労感が増した黒部さんの背中をさする。
「少し席を外します。
新谷、ちょっと。」
「あ、はい。」
新谷を伴って玄関から外へ出た。
「車の準備は出来てるか?」
「勿論です。いよいよですね・・。」
「私は黒部さんの車に乗る。」
「分かりました。自分は追尾車両に。」
「あくまで人質優先だが・・
だけど犯人が姿を現した時は、私からの指示を待たず各々の判断で突入してくれ。」
「了解です。」
「少しおさらいしておこうか。
喫茶店⇒ファミレス⇒カラオケボックス⇒最終引き渡し場所。
それぞれ20~30分滞在してから次の目的地へ。
時間の遅れは30分以内。
・・渋滞がひどかった場合は、
追尾車両が前に入って、
サイレン鳴らして黒部さんの車を誘導してくれ。」
「分かりました。
今までに要求された禁止事項は・・
①ボストンバッグに発信器を入れるな
②警察車両は1台まで
③30分以上遅れるな
・・・発信器を封じられた以上、
金を取りに来た所を現行犯で逮捕するしかないですね・・。」
「理想はそうだが、リカさんを無事に保護できれば御の字だ。」
「一番最悪なのは金を盗られた上に・・
リカさんの救出失敗・・。」
難しい判断だ・・・。
今までの犯人の言動から見て、
金さえ渡せば人質は解放される。
だがそもそもそれを信用しても良いものかどうか・・。
・・だがやはり・・
「新谷、金は盗られても最悪しょうがない。
最優先はリカさんの命だ。」
「・・・はい・・。」