溺れるほどの愛を
いた、ここに莉音がいた。
「まあいいか、では君、行こうか」
「あ、はい」
俺はお世話になったおばさんに一礼をし
旦那さんについていく事にした。
「君はどこから来たんだい?」
「それが記憶が無くて」
「そうかい、訳アリなのはあの子と同じだねぇ」
「え?」
「お母さんはああは言っているが実は気を掛けてあげててね」
「あの子…ですか?」
「そうそう、なんたってこの山を買うぐらいで、近所の人は寄り付かなくてね」
「まあ、結構入り組んでますよね」
「ああ、あの子は大切な人を目の前で亡くしたそうだよ」
「え?」
「だから、あまり聞かないでやってね」
「はい」
莉音だ。俺が死んだあとは此処に引っ越したのか。
「あの」
「ん?」
「あの…あの子は一人で生活を?」
「ああ、そうだね、基本は」
「基本は?」
「位牌には話し掛けてるが住んでるのは一人だよ」
「そうなんですね」
「そろそろ着くよ、ちょっと待っててね」
「分かりました」