カイザー

2回目

2人めを産むときは本当に悩んだ。

もし、帝王切開ではなく下から産むのなら最後のチャンスだから。これを逃すと3人めは確実に帝王切開になってしまう。

帝王切開後の自然分娩はリスクが高い。一度切ったところが弱いため、割けやすくなっているのだ。最悪の場合子宮破裂という母子ともに危険な状態にさらされる可能性がある。

だから、帝王切開後の自然分娩を受けてくれる病院は限られる。
近所も地元も探してみた。

でも、なかなか見つからない。

通っていた産婦人科の医師に相談ところ、言われた言葉がぐさりときた。
『下から産みたい気持ちと子供の命、どっちが大事か。』

結局、地元の病院で帝王切開をすることに決めた。

自分の気持ちと子供の命。比べるまでもなかった。

でも、自分の気持ちをそう簡単に無くすことなんでできなかった。
つらかった。悲しかった。
女として産まれてきて、他の人が普通にすることを自分はどうしてできないのか。
ただただ下から産みたいだけなのに。

それができない。

自分が欠陥品のように思えた。

そんなことでと思われるかもしれないが、絶望的な気持ちだった。

近づいてくる出産の日が憂鬱だった。
全然気持ちの整理ができなくて、出産直前まで何度も泣いた。

子供なんて作らなきゃよかったと思ったこともあった。

産まれてくる子供を愛せる自信すらなかった。

母に自分の気持ちを吐露したけれど、
「帝王切開すぐ終わっていいじゃない。陣痛痛くて大変よ〜」と。
そのときの私にとっての禁句だったのに。

私の気持ちなんて誰もわかってくれない。
聞いてもくれない。

苦しい。。。
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