midday crow
向日葵が足を止めたのは、人気のない特別教室の前だった。

「あの、ここでいいですか?」

「いいよ」

いちいち許可を取るあたり、礼儀正しい子である。

ひそかについてきていた男子も含め、三人は教室に入り、弁当箱を広げた。

とはいえ男子はコンビニの袋だった。

とりあえず紅羽は、彼女がなにか喋るまでは食べることに集中する。

向日葵は、しばらく動かなかったり、ぼんやりしながらトマトを箸でつまみ取り落としたりしてから、ようやく顔を上げた。

「あの……!」

「うん」

「私、永井向日葵といいます」
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