midday crow
部屋の隅には焔と彩人もいる。

焔は多分本気でベースの練習をしているが、彩人のドラムには身が入っていない。

地味に耳をそばだてていやがる。

太陽から目を逸らしたついでに、軽く睨んだ。

きまり悪い顔をして、彩人は小さく肩を竦める。

「だから光輝が黙って消えたときはそりゃあ、もー言葉には言い表せん感情があったな」

紅羽の様子には全く気づかず、そんなことを太陽は言う。

「そっか」

憤りなのか、悲しさなのか、悔しさなのか。

あらゆる感情が綯い交ぜになって、言葉にはならないのだろう。

光輝が核の一つだったというなら──さしずめ、心に穴があいたようなものか。
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