midday crow
「……あっれ、紅羽ちゃん」

少なからず、彩人は驚いたようだった。

紅羽が彼の教室を訪ねることなどなかったから、当たり前かもしれない。

用があっても今までは、放課後会えるしという感覚でいたからだ。

今日わざわざ会いに来たのは、放課後太陽の目の前で、あいつはどうしたと訊くのをためらったからである。

「ねえ、太陽くんどうしたの?」

彩人の後ろの席には焔がいて、彩人は半身で焔の方を向いていた。

紅羽は前置きもなしに問いかけながら、その辺の椅子を引っ張ってきて、焔の机に弁当箱を置く。

「……あー……ははは」

彩人か焔か、事情を知っているなら彩人かな、ということで目当ては彩人だったが、彼もなにも知らない可能性も頭に入れていた。

だが曖昧に、苦味を帯びた笑みを浮かべるなら、なにか知っているのだろう。
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