midday crow
しかしやがて太陽は、紅羽の手を引き剥がしてしまう。

「お、い、紅羽」

「や、ごめんって」

逸らしたままの目の奥を、彼は覗き込もうとする。

左手は彼に捕らえられていたので、反射的に右手で押し返そうとした。

しかしできなかった。教科書の類を抱えていたからである。

床に投げ落とすこともできなくて、紅羽は太陽と目を合わせることになった。

揺らぐことのない瞳が好きである。

黒々とした彼の目を、紅羽は見つめ返した。
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