midday crow
紅羽は床に座り込む。傍らに教科書を置いた。

太陽も同じようにしていて、紅羽の正面にいる。

紅羽は膝の上で両手を握り合わせた。

話すことは決まっている。

自分を奮い立たせて、言葉を絞り出した。

「光輝」

「ん? 光輝?」

「光輝……に、頼まれた」

「光輝って阿鳥光輝?」

「そう。光輝に、軽音楽部に入ってくれって、頼まれた」

「…………」

彼の顔を見ると、紅羽の言葉の意味を掴み損ねているようだった。

だが次第に、ゆっくり理解をしたみたいだ。
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