midday crow
腕を引かれた勢いをそのままに後ろに顔を向けると、数段上に太陽がいて、ゆっくりと身をかがめた。

避ける時間は十分あった。

避けなかったのは紅羽の意志だ。

柔らかく合わせた太陽の唇は温かかった。

ほんの数秒のキスを終えて、太陽ははにかんだ。

「なんでかわからんけど、今日、紅羽とキスしたかった」

「……だめって言った」

「ごめん」

「許す」

ふん、とそっぽを向きかけて、紅羽は動きを止めた。

「……太陽くん。あのさ」

「ん?」
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