midday crow
七瀬は悔しげに眼鏡のブリッジを押し上げる。

「こんなことならもっと早くに来ておけばよかった……」

「そんなこと考えるのはあとだよー。今の、二曲目、私好きなんだよねー」

ふわふわと笑いながら凛がそう言う。

こいつは昨日も聴いていたので、どんな曲かはあらかた知っているのだ。

明るく、突き抜けるような、開放感溢れる曲だ。

「……俺も好きだな。あと、みんな楽しそうだ」

「ねー」

音が弾けて飛び跳ねる中、ステージ上の四人は、ときどき目を見交わし、弦をかき鳴らし、軽快なドラムに乗せて、キーボードを踊らせている。
< 329 / 361 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop