midday crow
本気でキスしてやろうかと思った。

けれど同時に、太陽ではなく藤を見た、そのことに満足感を覚えた。

「…………」

「? あっ、もう曲終わるっ……」

「……チッ」

「え、舌打ちした?」

「別に」

再び健気に首を伸ばして、届かない太陽に視線を送り続ける。

そんな向日葵に藤は苛立つ。

さっさと諦めればいいのに。

そして俺だけを見ればいい。

邪かつ率直な藤の願いが叶うのは、もうしばらくあとのことになる。
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