midday crow
「わかるやつにはわかるんだよ、おまえとかな」

得意顔をするところじゃない。

ポーン、と白鍵を弾いた。

なんとなく、本当にそれだけなのに、どうして彼の音楽のイメージがわかるのだろう。

部分的で、詰めはまだ甘いが、一曲完成しつつある。

風を切り低空飛行する。

漆黒の翼を閃かせ、大空に舞い上がる。

光の輪の中でもかすまない烏。

羽ばたきの音が聞こえてきそうな曲だ。

ぼんやりと、紅羽の思考は遡っていた。
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