midday crow
演奏に──自分を込めるのだ。

ぶつかって、絡み合い、撫でて、すくい上げる──それは紅羽たちの音楽だが、紅羽たち自身でもある。

距離など、最初から取れるはずもなかったのだ。

唇が震えて、思わず手を当てた。

彩人は眉尻を下げて、少し笑った。

「傷つくよ、あいつらは。黙って去られたらね。だから、いつか──光輝が帰ってきたときでも、それより前でもいい。軽音楽部やめる前に、あいつらにちゃんと話してあげてほしい。だから俺は言わない」

紅羽はなんだかよくわからなくなっていた。

どうするのが正解なのか、つまり頭が回らない。
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