そして少女は兵器を討つ
「化け物でないとしたら、何者だ?」

「私は、ミリアリア」

「……聞いたこと、ないね。ほかに名前は?」

「ほかに?」

薄い壁に当たったように立ち止まると、男は肩をすくめた。

「誰かに本来の名前以外で呼ばれたことはないかい? そう、二つ名、と言うべきか」

本来の名前、以外で……?

「……――レット……」

「うん?」

「スカーレットと、呼ばれる」

呟きを拾われ、二度目、はっきり答えると、男は笑った。

失笑だった。

「スカーレット! 血溜まりの子猫ちゃん!! ははっ、納得したよ。鷹眼のミスターが飼ってる小さな死神が来たのか! そうかっ、ははははっ!!」

その笑いは、男が、ここで倒れることを予測しての、ひどく自虐めいたものだった。

そう、あくまでも男が男を虐げた言葉。
< 9 / 54 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop