白井君の慰め方

ひらりと私に手を振ると、先輩は後ろの車両へと移動していく。誰かと待ち合わせでもしているのだろうか。今は先輩と離れられて正直ホッとした。

「…びっくりした…」

小さな声で呟いて、心臓の位置に手を置いてみる。やばい、ドキドキしてるのすごく分かる。なんだか一人火照ってる。熱い、どうしよう。

なんとか誤魔化そうと無闇にスマホに目をやると、さっき貰った先輩のスタンプが目に入ってまた心臓の鼓動が大きくなってしまった。これから毎回このスタンプを見る度に先輩を思い出す事になるのだろう。誰かに使う度に、先輩に連絡しなきゃって思うように、今日の事を思い出すようにーー

『なんか元気無いね。最近暑いから?』
『何かあったらコレで連絡ちょーだいね』

…もしかして、聞いても何も言わない私を心配してこんな風にしてくれたのかな。私になんて興味無いんだと思っていたけれど、先輩は私の事ちゃんと見てくれてたのかな。

『俺の事考えてる楓ちゃんって可愛い』

そうじゃなきゃ、私が先輩の事考えてたなんて、分からないはず…思ってるよりも、私の事考えてくれてるのかな。私と同じスタンプ使ってくれたり、なんだか私達ちょっと付き合ってるっぽい感じ…

それからはもう、スタンプを見る度にニヤニヤしてしまった。先輩との繋がりを感じて嬉しくって、このスタンプを見る度に先輩の事で頭が一杯になる。ドキドキが収まると今度はウキウキするようになって、あれだけ考えていた事がどうでも良くなって、気づいたらすっかり元気になってる事に気がついて…やっぱり先輩の事が好きなんだと、理解した私が居た。

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