白井君の慰め方
何でも教えて欲しいなんて、そんなのお安いご用だ。むしろ当然の勢いですらある。が、白井君は信じられなかったのか、念を入れるように質問を続ける。
「なんでもって、何があって、どんなやり取りをして、どう思ってる、とかだよ?」
「はい」
「言われた事とか言った事とか、もしかしたらスマホの中のやり取りまで、なんでも教えて欲しいって言ってるんだよ」
「はい」
「それはダメだよ!」
「?」
そんなの全部良いに決まってるのに、良いとも言っているのに、急に白井君がダメだと言い出した。教えて欲しいって言い出したのは白井君なのに。なんで?
首を傾げる私に、白井君は大きな溜め息をついた。次は呆れられてしまったのか…断わるのが正解だったのだろうか。でも断り様もないのだ。だって今も全部白井君に話している。毎日全部話してるから、隠し事なんて一つもない。
「あのさ、こういうのはダメなんだよ。いいんだよ相原さん、全部教える必要なんて無いし、全部把握させろって言ってくる奴なんてロクな奴じゃないから断らないとダメだよ」
「いや、流石に白井君じゃない人だったら断るよ」
「俺でもダメ」
「なんで?白井君はそういう人じゃないでしょ?」
「そういう人じゃないはずだったんだけど…自分でもよく分からないんだ」
悩ましげに白井君は頭を抱えた。白井君がこんなに困ってるのは初めて見る気がする。
「…もしかしたら俺は束縛するタイプなのかもしれない」
そして、急の爆誕投下に私は次の言葉を飲み込んだ。急にどうしたというのだ白井君は。混乱を極めているのかもしれない。こんな時に私が余計な事を口出さない方がいい、そうに決まってる。