白井君の慰め方

「はい。全部白井君のおかげです。白井君は、私の大切な人です」

自分の口から出た言葉は力強くて、今までの何より嬉しくて、自信のある言葉だった。 私の言葉が、キラキラと輝いて感じる。胸の中に元気が溢れてくる。

「…それが本当の楓ちゃんだったんだろうな」

先輩はポツリと呟くと、ニッコリ笑った。

「ごめんね。こちらこそ、今までありがとう」

差し出された手と握手を交わし、私達は分かれて電車に乗った。伝えたい事と想いが全て伝えられた、そんな幸せの余韻があった。胸の支えが取れて、心は晴れ晴れとしている。全てが上手くいくような、そんな予感がある気持ち。きっと今なら何でも出来る。

「…先輩、格好良いね」

隣の白井君がポツリと呟いた。

「うん。素敵な人だね」


ーーそう答えた、その日から三日後の事。

白井君は髪を切った。以前より全体的に短くなって、さっぱりとした髪型。何より変わったのは、前髪。隠れていた白井君の瞳が、顔が、表情が現れる。

「白井君?!」

驚く私に白井君は、「切ったんだ」と、俯きながら言った。

「どうかな。…変じゃない?」
「変じゃない!変じゃない!!」

それどころか、

「カッコいい!!!」

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