白井君の慰め方
「じゃあ良くね?」と三嶋君に言われると、もう何も言えなかった。確かにもう良いからだ。そうなのだ、問題は無い。白井君に大切にされているのは私だ。他の人にちょっと優しくなかったからって、私への優しさとは違うものだって分かってる。
「でも、嬉しくないならそれは伝えた方がいーと思う」
「……うん」
でも、そんな事を言うのは我が儘ではないだろうか。困ってしまわないだろうか。とても心配になる。
「大丈夫だよ」
私を見て、三嶋君は言った。心配になっていたのが伝わったのかもしれない。付き合う中で分かって来た。この人は案外、周りをよく見ている人だ。全て分かった上であえてやっている人。何も考えないデリカシーの無い人ではなく、あえてデリカシーを捨てる選択をしている人、だった。それが彼なりの仲良くなる方法だったらしい。
だからそんな彼は、最近の私の様子に気づいて心配してくれたのかもしれない。相談に乗ろうと声を掛けてくれたのかもしれない。
「三嶋君、ありがとう」
「…どういたしまして」
二カッと笑った顔に、不安を吹き飛ばしてくれる元気を貰った。私はいつも誰かに助けて貰ってばかりだ。良い人ばかりなんだ。
そう、良い人なのはもちろん白井君も。そんな白井君なのだから、何か考えがあるのだと言うのなら、少し待ってみようかな。大丈夫だって三嶋君は言ってくれたけど、私は私で、これが私の白井君だぞ!と、堂々としていれば良いだけなのだから、どんと構えてみてもいいと思う。
ーーだから、
「最近の白井君、カッコいいとか優しいとかって噂だよね。なんだか私も嬉しいよ」
白井君がやりたいようにやってみれば良いと思う。私はそれを見届ける、それに徹してみようと思う。