白井君の慰め方
我慢出来ない私はこんな事を聞いてしまう。一番面倒で、一番聞くべきではない言葉だった筈なのに、堪え性の無い私は結局やってしまう。なんて面倒で嫌な女なんだろう。
自己嫌悪に苛まれる中、目の前の白井君がハッと顔を上げた。私の言葉にショックを受けているようだった。
「そんな事は絶対に無い。絶対に無いよ、断言する」
「……うん」
「ただ、疲れてたのは本当。ちょっと最近頑張り過ぎた」
「?」
頑張る。それは以前も白井君が言っていた言葉だ。最近頑張り過ぎたという事は、最近頑張り始めたという事。なんだろう。何が白井君を苦しめているのだろう。
…私が苦しい時、確か白井君はこう言ってくれた。
“やめたらいいよ”
「…疲れるなら、やめたら良いよ。無理しないで欲しい。困ってるなら教えて。手伝いたいよ」
「……」
「白井君は白井君のままでいればいいんだよ。頑張っても、頑張らなくても、白井君が白井君でいてくれればそれで良いよ」
「……」
「私は、そのままの白井君が好きだから」
白井君はいつも私を受け入れてくれた。それが私の力になって今日までこれたのだから、私が彼に伝えるべき言葉はこれだった。やめればいいし、そのままでいい。私はあなたが好きで、大切だと伝えたい。
ただ、これは私から白井君へのお願いでもあり、私の我が儘でもある。頑張る白井君を応援したい。でも疲れるほど頑張らなくていいよと言いたい。変わらないそのままの白井君で居て欲しい。私のわからない所で何かが変わるのが怖い。
結局、白井君を想う以外に私が考えるのは、私にとって都合の良い事ばかりである。こんな自分はずっと変わらないのだなと知った。何かが変わっても、変わらない部分もある。変わって欲しい所ほど、変わらない。
「…相原さん」