白井君の慰め方
白井君がジッとこちらを見つめる。
「相原さんは、今の俺をどう思う?」
突然の問いに困惑したけれど、思ったままを告げる他無い。
「…カッコいいと思うよ」
「前の俺は?」
「カッコいいと思う。私は、どんな白井君もカッコいい」
断言出来る。白井君はカッコいい。誰よりもカッコいい、素敵な人。
「…じゃあ、もうやめようかな」
すると、小さく笑った白井君は、どこかホッとした様子だった。首を傾げる私に、「実はね、」と、白井君は教えてくれる。
「相原さんがカッコいいから、俺もカッコよくなりたかったんだ。相原さんに釣り合うような、相原さんが自慢出来るような、そんな人になりたくて、ちょっと頑張り過ぎた」
「変わろうと思ったんだ」と、彼は言う。
「誰にどう思われても気にならなかったけど、相原さんが俺と付き合ってる事で揶揄われるのは嫌だし、きっと三嶋とか先輩とかだったらこんな事にならなかったんじゃないかって思ったら、変わるべきだと思った。そしたら相原さんも喜んでくれるかなって」
「白井君…」
「でも、相原さん以外に気を遣って、相原さんの前で不安にさせてたら、何の意味も無かった。本末転倒だ。つい相原さんの前だと素の自分が出て、ぼうっとしちゃってた…本当にごめんね」
頭を下げる白井君に顔を上げてと慌てた。そんな事を考えていたなんて思いもしなかった。上の空だったのは、疲れた自分を私の前で自然と出してくれていた、そういう事だったのだ。
「髪を切ったのも?」
「うん」
「色んな人に、優しかったのも?」
「うん」
「全部、私の為…?」