白井君の慰め方
前からやって来る彼と、パチリと目が合った。あれ?え、なんで?どうして?
「白井君だ」
「…どうも」
軽く私に頭を下げた白井君は、制服でも体操着でも無い服…多分部活の練習着的なものを着ていた。ダボっとした大きめのTシャツみたいなのとツルツルした生地のハーフパンツ。…これってもしかして、
「まさか、白井君ってバスケ部?」
「そうだけど…」
「え、見えない!見えないし知らなかった!」
「よく言われる」
やれやれといった表情で白井君は答えると、「じゃあ」と、あっさり通り過ぎて行こうとするので慌てて引き止める。だってまさかの白井君が、まさかのバスケ部で、まさかの偶然の一致を、ここで易々と見過ごす訳にはいかない。そんな私の内情を知らない白井君は、いきなりがっつりと腕を掴まれた事に大層驚いたようで、目を丸くして私の顔を見た。
「何?」
「ど、どこ行くの?」
「保健室だけど」
「どこか怪我したの?」
「いや、救急箱の備品が足りないから発注した分取りに行く所。マネージャーが今日休みだから」
「そうなんだ…」
引き止める為だけにあつらえた雑な質問に丁寧に答えてくれた彼は、私が納得したのを確認すると、「じゃあ」と、再度保健室へと向かい出そうとする。…のを、もう一度阻止した。だって良い事を思いついた。
「ねぇ、私も行って良い?」
そして返事を待たずに「行こう!」と、彼の腕から手を離すと私は先に歩き始めて、白井君はちょっと戸惑いながらも私に続いて歩いてくれた。向かうは保健室。今日は白井君からバスケ部の雰囲気を感じ取ろうと思う。もっと話してみたかったし、なんて一石二鳥な出来事なんだろう。