白井君の慰め方

「白井君はさ、中学もバスケ部なの?」
「うん。小学校からやってる」
「じゃあすごい上手いんだ!」
「すごい上手くは無いけど…俺の中で得意ではあるかもしれない」
「そんな遠慮して。今思えばだけど、白井君って背も高いし手足も長いし絶対バスケ向きだよね。なんで勝手に文化部だと思ってたんだろう」
「俺のインドア派な空気がそうさせたんじゃない?」
「そういえばバスケもインドアか。白井君色白いしね」
「焼けてもすぐ戻るんだよ、割と白過ぎると恥ずかしい」
「えー、それ女子的にはすごく羨ましいけどなぁ」

思ったより会話がすんなりと続いていく事に驚いた。正直、声を掛けておいて少し不安だったのだ。何を話そうとか、素っ気なかったらどうしようとか、普通に普通の事に緊張した。けれど白井君は、あまり微笑んだりはしないものの、ちゃんと返事をしてくれるし、ちゃんと目を合わせて相槌も打ってくれた。意外だった。心配した分すごく嬉しかった。…だから、

「白井君ってさ、思ったより普通なんだね」
「…どういう意味?」

浮かれたままに口をついてしまったその言葉の、あまりにも気遣いが足りていない様に白井君の氷のような視線を感じて気がついた。やばい、調子に乗って失敗した。

「違うの!悪い意味とかじゃないよ!全然良い意味!良い意味で普通だなって」
「……」
「ほ、ほら白井君と私ってあんまり話した事が無いでしょ?だから勝手にこう、暗いイメージがあったというか、目も合わさずボソボソ話すイメージが…」
「冴えないからね、よく言われる」
「そうじゃなくて!そういう事が言いたいんじゃなくて…っ」

ガラリと、私の言葉を待たずに保健室のドアを開ける白井君はそのままズカズカと入っていってしまって、私は慌てて後に続いた。室内には誰も居ない。先生は留守だった。白井君はそのままデスクに向かうと入室表に記入して、ダンボールにまとめてあったものの中身を確認し始める。私はその姿を黙って見つめていた。先程の失態から、白井君に声を掛ける勇気が出ない。
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