白井君の慰め方
「……」
「……」
互いに無言である。どうしよう。どう考えても私がここに居る意味なんて無いし、白井君にとっては邪魔者でしかない。今のこの状況、迷惑以外の何ものでもない。用があるとでも言ってこのまま出て行ってしまおうか…とも考えたけれど、それはやめた。
「…ごめんね白井君」
白井君を傷つけたのかもしれないのに、このまま無責任に逃げ出す事なんて出来なかった。あの日私にジッと付き合ってくれた白井君に、そんな事はしたくない。白井君に嫌われたくない。でも鬱陶しく思われるかもしれない。だけどちゃんと、思ってる事を伝えておきたい。
「つい浮かれてあんな言い方になっちゃって…普通っていうのはその、話にちゃんと答えてくれたっていうか、友達みたいに話してくれたって事で、なんかそれが上手く言えなくて…」
「……」
「…私と話してくれたのが、嬉しかったの…」
そう。白井君とまたこうして話せて、しかも自然と会話が続いた事がとっても嬉しかったのだ。だからどんどん調子に乗ってしまって、考えなしに言葉が飛び出して、結果こんな事になってしまった。ただ嬉しかっただけなのに、余計な事ばかり言って肝心な事が言えていなかった。
「この前の慰めてくれた時もそうだけど、今回も付き合ってくれてありがとう。ごめんね…」
後はこの場から居なくなるだけだと、そっと退室しようと後退る。と、その時、急に白井君の視線が手元のダンボールから私の方へとパッと切り替わって、私の足がピタリと止まった。
ジッとこちらを見つめる彼の表情から、何を考えているのかは読み取れない。無表情の白井君とただ目が合うだけの時間の中、ふと、彼の目は深く、重い色をしているように感じるなと思った。だから目が離せないのかな。
「相原さんは普通じゃなかったよ」
「……え?」
唐突に告げられたそれ。慌ててどういう意味かと考えるけど、全くもってよく分からなかった。あれかな。もしかして私への嫌味なのかな。それとも褒めてくれてる?話の前後を思い返せば返す程わからなくなる。