白井君の慰め方

何が楽しいのか、割と表情に乏しかった白井君がこんな時に口角を少し上げて笑う。冴えないと自分の事を言いながら、自虐的に笑ってそれで良いなんて言う。自分がダメなもの、みたいに言う!

「白井君の冴えない所は白井君の一番良い所だから!」

……
………あれ?

「…これは、褒めてます…」

またやってしまった。白井君は冴えなくなんてないよ、そのままで素敵だよといえば良かったものを私は、私は…

「そ、そのままの白井君が特別で、素敵だと私は思っています…」

冴えない事を肯定してしまった手前、無駄に否定して足掻くより、素直に受け入れてストレートに伝えるしかないと心の中で土下座しながら丁寧に言い換えた。それ自体はとても簡単な事だし、きちんと言葉に出来たと思う。だって全て素直な本音なんだから。それでも背中を這う冷や汗が止まらない。皮肉だと捉えられても可笑しくなかった。黙っている白井君は何を考えているのか分からない。

「…ふふ」

すると、目の前の彼から小さく漏れた声は、なんだか笑い声のようなもので…

「はははっ」
「…白井君?」

何がどう彼のツボに入ったのか分からないけど、どうやらどこかにクリーンヒットしたらしい。あれだけ表情を動かさなかった白井君が今、目の前でゲラゲラと笑って涙を拭っていた。私は完全に取り残されている。

「はー笑った。じゃあ俺は冴えないから相原さんに素敵だと思われてるんだ」
「え!あ、いや、冴えないからっていうか、冴えないのも白井君っていうか…」
「なんだそれ。よく分かんないけど案外相原さんって俺の事知ってんだね」
「そりゃあ知ってるよ!だってあの時慰めてくれたのは白井君だよ!あれからずっと話したかったし気になってたし、」
「俺も。なんか悩んでそうだったから気になってた」
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