白井君の慰め方

出て行かない彼に、どうしたの?と尋ねると、目の前で白井君は何やらごそごそとダンボールを探り出す。

「相原さん。手、出して」
「?はい」

ぺたりと、手の甲に貼られたそれは至って普通の絆創膏だった。…ん?絆創膏?

「何も怪我してないけど…」
「うん。分かってる。分かってるんだけど」

私の手の甲を見つめていた彼の二つの瞳が、急に私の瞳をとらえる。濃い瞳にジッと見つめられると、焦げそうな程の集中力が私に向けられている事が分かった。

「…手当てしてもらうとさ、何となく軽くならない?なんかこう、ふわふわした気持ちになるっていうか」
「手当て?あー、うん…」

急の問いかけに、ええと、とそれを思い浮かべてみる…確かに。言われてみれば確かに、転んでお母さんに絆創膏を貼って貰った時、痛いのが飛んで行った気持ちになった気がする。薬を塗って貰った時とか、自分で塗るよりもはるかに効くよう気がしたと思う。確かに手当して貰うと嬉しくって元気になる気がする!…あれ?だから私に絆創膏を貼ってくれたって事は、つまり…

「俺はなるんだけど、だからその、これで相原さんの気持ちも少しは軽くなればいいなと思って…あーごめん。意味分かんないよな、ごめん」

「それ剥がしていいよ」白井君は気まずそうに貼ってくれた絆創膏を指さすと、私から目を逸らす。私は白井君の視線が離れてしまった事に少し寂しく感じながらも、温かい余韻に浸る気持ちで、絆創膏の貼ってある手の甲をぎゅっと包み込んだ。剥がすだなんてとんでもない。

「…慰めてくれたんだね」

あの時もそう。白井君は私に自分のやり方で元気付けようとしてくれるのだ。上手く出来ない、なんて言いながら、自分の出来るやり方を考えながら。

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