白井君の慰め方
恋とは自己満足の塊である
あー、白井君と話したい。
廊下を通る度にこっそり隣のクラスを覗いてみると、その度白井君は男子の中に埋もれていた。割と男子受けするタイプで、友達が多そうだった。女子はまるっきりそういう目で彼を見ていない感じだけど、普通に話してるのが羨ましい。こんな風にこそこそ覗かないで自然に話せるのが羨ましい。私も同じクラスだったらよかったのに。
「ねぇ知ってた?白井君ってバスケ部なんだよ」
「へー」
「背、高いしねぇ。手足長いしねぇ」
「前髪も長いけどね。あれじゃ見えなくない?」
「!もしかしたらゴムで結ぶパターンあるよね?やだかわいい絶対!」
新たな可能性が生まれた事に歓喜してしまった。それはヤバイ、色白で小顔な白井君が前髪をあげたら一体どんな雰囲気になるんだろう。おでこ広いのかな、狭いのかな。綺麗そう、つるつるすべすべなお肌をしてそう。
「ねぇ。やけに最近白井の話多くない?」
ギクリ。
「そ、そうかな」
「そうだよ、やたらニヤニヤしてるし。先輩の事聞いてくる時ともまた違うけど」
彼女は例の、先輩と同じ高校に通う友達が居る友達、だ。私の一番仲の良い友達。いつも何かとそれこそ恋に落ちる度にお世話になっている。
「ち、違うかな。違う?」
「違う違う。先輩の時はこう妄想の中に入り込んでるというか、恐れ多い感出てるっていうか。白井の時は愛犬自慢してくる奴みたい」
「あ、愛犬自慢…」
確かに。答えが的を得過ぎて受け入れる他ない感じだった。それだ。先輩への好きと白井君への好きの違いってこれだ。きっとこれだ。