白井君の慰め方

「その先輩っていうのが相原さんの彼氏なの？」

白井君は躊躇うこと無く核心を突いた質問をしてくる。その方が良い。その方が助かる。

「うん。彼氏、のつもり」
「つもり？」
「なんかこう、付き合ってるって言って良いものなのかよく分からなくて…付き合ってるつもりでは、あったんだけど」
「つまりあの日から悩んでたのはその事？」
「……うん」

何回同じ事を繰り返しているんだろう。この事に悩んでますって、何回頭の中で繰り返して、何回これじゃダメだって思い直して、何回この人に迷惑は掛けられないって思い留まっただろう。

結局全てに何の意味もなくなった。結局こうやって甘える事になってしまった。情けなさにどんどん頭が重くなって、顔が俯いていく。これを言って、だからどうなるというのだ。白井君に話す事で私が少しスッキリするだけだ。秘密にしない事で罪悪感を軽くさせただけだ。

彼氏が居る癖に…もしかしたら白井君を傷付けてしまう事になるかもしれないのに…

「それならやめればいいのに」

唐突に、目の前に答えが転がり落ちる。白井君の口から零れ落ちた言葉だった。

「そんなに悩むくらいならやめればいいのに。付き合ってるかどうかで悩むなんて可笑しい。悩ませるなんて可笑しい。相原さんの気持ちが勿体ない」
「私の、気持ち？」
「そう」
「でも私は別に何も…だって貰ってばっかりだし…」
「じゃあなんで悩む必要があるの？貰ってたら相原さんはもっと喜んでるはず。相原さんはもっと楽しそうに笑う人だったはず」
「……」