白井君の慰め方

…白井君の言う楽しそうじゃない私は今、一体どんな顔で笑っているのだろう。

「ねぇ。相原さんは彼氏に何を貰ってたの?」

ーーそれは本当に必要なものなの?

そう尋ねられた気がして、ハッと息を飲んだ。憧れの彼との素敵な思い出…それって私に本当に必要?必要…必要。

「必要、だよ。だって私は先輩が好きだから、ずっと憧れてて、ずっとそうなれたらいいなって思ってて、そしたらそれが現実になって…」

……あれ?

「わ、私、いつも片思いしてて、ダメになってもまた片思いして、それでいつも、いつかって、私だけの特別な人が出来たらいいなって…」

……あぁ。そうだったんだ。

「…そうだ。私だけの特別な人が欲しかったんだった。私、だからいつも恋してた。だってそんな人が出来たら幸せだなって、考えるだけで楽しかった。そしたら先輩が声掛けてくれて、妄想が現実になって…今はなんか、よく分からなくなっちゃった」

ずっと好きだった。キラキラした先輩が眩しくて、いつも俯いてた気がする。先輩は私にとって雲の上の存在だったから、そんな先輩の彼女になれて浮かれたりもしたけれど、戸惑ってばかりだったようにも思う。そりゃあ先輩も困るよね。そうなる?って、思うよね。だって私、全然喋らないし、全然目も合わせないし、私といたってこれって何の時間?って思うよね。もう人間関係としても破綻してるよ。他に彼女が居ておかしくない。居て貰った方がありがたい。私との無駄な時間が少しでも減るのだから。

「ずっと先輩にとっても失礼な事をしてたんだね。私、先輩との恋にばかり目がいってた。よく言う、恋に恋してるってやつだった」

ずっとそうだったように思う。私はきっと趣味、片思いとでも言える程、いつも恋する相手を探してた。叶う、叶わないじゃない。想ってる相手がいる事が大事だった。だってそれだけで毎日が楽しくなった。明日が来るのが楽しみになった。そんな毎日が幸せだった。その妄想相手が、先輩だった。

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