白井君の慰め方
本格的に泣き始めてしまった私のせいでひたすらに終わりが見えないそれだったけど、隣の彼は何も言わずに傍に居てくれた。ずっと背中を優しくさすったり、トントン軽く叩いたりを繰り返してくれて…それこそ私が情け無さに消えてしまいたくなるくらいに、彼は生真面目に泣き続ける私の隣に居続けてくれた。
「う…ご、ごめん、もう大丈夫だから…」
ようやく落ち着きを取り戻した頃には、もう何本か電車を見送った後だった。向かいのホームにもう先輩の姿は無い。
「ありがとう、えっと…」
顔を上げたそこで初めて隣の彼をしっかり確認すると、ハッとした。あぁ、この人知ってる。
「白井君」
そうだ、このはつらつとしていない少し冴えない感じ。髪の毛がもしゃもしゃで色白な感じ。隣のクラスの白井 颯(しらい そう)君だ。
「え、なんで?」
これだけお世話になっておきながらも、つい素直に思った事が口をついてしまった。だって女子を慰めるとか、そういうタイプの人には見えない。ましてや顔見知りでも無い私なんかを。
「体調悪いのかと思ったから」
「え?」
「相原さん」
「私の名前知ってるの?」
まさかの出来事に声をあげると、白井君は怪訝そうに眉を寄せて私を見る。
「相原 楓(あいはら かえで)でしょ」
「そう!」
「同じ学年の子くらい分かるよ」
やれやれといったように俯いた彼は、「で、もう平気なの?」と、私の顔を見ないままに尋ねる。