白井君の慰め方

「…つ、付き合ってるような…」
「ような?」
「……」

罪悪感が募って言葉に詰まってしまう。はっきりと言い切る自信が私には無い。はっきり言えない事もまた、私が私を守る為の行動でしか無い。…でも、

「私達、付き合ってたんですか…?」

脳裏に浮かぶのは私達の今までよりも、あの彼女の姿。ホームの向かい側に佇む二人の姿。

「付き合ってたよ」

またぼんやりと自分の中に向かい始めていた意識が、先輩の言葉で引き戻される。

「つーか今も付き合ってるつもりだよ」

ハッと見た先輩は笑っていた。カラカラと、笑っていた。

「でも今日終わらせるんでしょ?俺の為に」

ーー俺の、為に。

なんでわざわざそんな事を言うのだろうと思った瞬間、言葉の真意にやっと気が付いた。そうだ、私が言った事はそういう事だ。またやってしまった。私はけじめをつける為に先輩との別れを選んだ。それは先輩に失礼な事をしてきた罪滅ぼしの皮を被った、ただの自己満足であった。

「そうじゃないよね。楓ちゃんは楓ちゃんの為に別れたいんであって、俺の為だっていうのは違くない?」

全てを悟って尚笑顔で語る先輩の言葉が、胸に突き刺さる。否定する事なんて出来る訳が無い。

「結局俺の事、好きでもなんでも無かったって話だもんね」

ーーけれど、それは違う。それは違うのだ。

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