白井君の慰め方

「私は白井君の事が好きだけど、今後そういう風になるつもりは一切ないです」

キッパリと告げる。毅然とした態度で告げなければならないと意識した分、思ったよりも鋭くなってしまった。大丈夫かなぁと心配したものの、目の前の男子から返って来たのはそんな事を気にもしない、吹き飛ばすくらいの大笑い。

「あははは!一切ないですってヤバくね?つまりお友達としての好きだから勘違いすんなって事じゃん!」
「!ち、違っ、」
「まじか、白井可哀想ー」
「結局そういう事なんだよなー」
「まぁ元気だせよ白井。次いこ次」
「いや、次とか言われても」

わらわらと周囲から集まってくる言葉の中に混ざっていたその声。ハッとして目をやると、そこには感情の読めない無表情が一つ、いつの間にか顔を覗かせていた人々の中に紛れていた。いつからそこに居たのかなんて、どこから何を聞いていたのかなんて分からなかった。でも、今の会話の流れが最悪な事だけは充分に分かっていた。

「し、白井君、えっと、」

…でも、だとして今私は白井君に何を言うの?

「白井おまえ振られてんじゃんー」
「結局の所白井はどう思ってんの?」

好きっていうのは恋愛的な意味ですって?でも付き合うつもりも本当に無いんですって?それを伝えるのって何か意味があるのかな。また私の為でしかないんじゃないのかな。

「つーか白井ってそういう感情あんの?」
「相原さんとどこで知り合ったの?」
「白井って実はモテんの?」

というかなんかやたら野次が飛んでるんだけど、白井君ってみんなに興味持たれ過ぎじゃない…?こんな状況白井君にとって迷惑以外の何物でもないじゃん…何やってんだろう、私…
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