白井君の慰め方

「あー、相原さん」

残された廊下でポツリと白井君は、私の前に立つ。辺りにはもう私達に興味を持つ人は居なかった。

「もういいの?」

…もういいの?それが何の事だか分からない。今の騒動の事、先輩の事、悩んでいた私の事…心当たりが多すぎる。

「えっとほら、この間の約束…どうだったのかずっと気になってて」

約束?…あぁ。ちゃんと覚えててくれたんだ、白井君。気にしてくれてたんだ。優しいなぁ。嬉しいなぁ。そうだよなぁ、白井君だもん。

だから、ちゃんとしないと。

「もう大丈夫だよ、慰めて貰わなくても立ち直れたから」
「……そうなの?」
「うん、そう。それにもう当分恋愛関係はお休みする事にしたんだ」

私の恋は自己満足の塊だ。こんなものは一人で消化してしまおうと思う。思う存分一人で楽しんで、私の中だけで完結させる。まだ私には恋愛は早すぎたのだ。

「気にしてくれてありがとう。もう大丈夫だよ」

でも、ひっそりと想う事だけは許して下さい。私は私で白井君を想う分、白井君の幸せの為になれるよう頑張ります。陰ながら白井君の事を応援しています。だからこれからも変わらない白井君でいて下さい。

「そっか。じゃあ待つよ、相原さんがまた復活するまで」
「うん。…うん?」

もうこれで白井君と話す事も無くなるのかも、なんて思いながら心の中で勝手に呼びかけている間に、白井君からの返事があった。だから反射的に返事をして、でも改めるとなんだか引っかかって、んん?と首を傾げる事に。無い頭を捻る必要がある。

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