白井君の慰め方
白井君は好きな人

視野が広がると世界が変わる



「おはよう相原さん」
「おはよう白井君」

しみじみと、こうして挨拶が交わせる喜びを噛みしめる。もう関わる事も無くなる覚悟だったから、余計に普段の行動一つ一つの有り難みが身に染みた。私は今までなんて勿体無い事をしていたんだろう。

「今日早いね」
「うん。ちょっと早く目が覚めて」

なんちゃって。朝練の時間を教えて貰ったから終わる頃に合わせて登校してみました。朝練後の着替える前の姿です。レアです。素敵です。

「……」
「?何?」

ジッと見つめてくる白井君は、「いや、なんでもない」と、プイっとそっぽを向いてタオルで口元を隠した。可愛い。

「……」
「……」
「…俺、着替えあるから行くね」
「あ、うんごめん!また後で!」

あー幸せ。完全に目に焼き付けた。照れて戸惑って少し困ってる白井君可愛い。やっぱり好きな人がいるって楽しい。幸せ。

私の立ち直りが早いのか、それとも白井君の慰め方が上手いのか。あれからすっかり元気を取り戻した私は今、絶賛白井君に恋の真っ最中である。あれだけ離れるべきだとかなんとか思っていた過去の私は今頃不貞腐れているんだろうけど、白井君がそれで良いって言ってくれたんだから、仕方ない。その恋の相手が自分だなんてこれっぽっちも思っていないだろうけど、でも私に恋をやめなくていいって言ってしまったんだからしょうがない。それは許して貰いたい。

ただ、別に本人にこの気持ちを伝えるつもりは無かった。恋をやめると決めたあの時の、白井君の幸せをひっそりと願いたい気持ちと同じ。私の心の中でだけで終わらせるつもりである。だけど本人から許されていると思えるだけで罪悪感がこんなにも無くなるとは!恋って最高!きっと今が一番楽しくて幸せな時なのだ。ここら辺が私には丁度いい。

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