白井君の慰め方

珍しく慌てた様子の白井君が、一歩踏み出して私に問う姿にすら胸打たれる。やだ焦ってる白井君可愛い…っじゃなくって、

「ファンはファンだよ、白井君のファン」
「誰がっ?」
「もちろん私が!」
「……」

これでもかと驚きやら焦りやらを全面に出していた白井君の目がスッとすわって、ピタッと口が閉ざされる。まるで何かをバッサリと切り捨てたような、それともその何かを奥底に全部仕舞い込んでしまったような、急に無くなってしまった彼の表情。

「…だ、ダメだった…?」

そう尋ねずにはいられなかった。お手本なまでに見事なスン顔で、ただジッと私の目を見つめる白井君。私の目…だと思う。もうなんかどこを何を思って見つめているのかもよくわからないくらい投げやりな感じだったけど。

「ダメ…というか」
「うん」
「嫌ではあるんだけど」
「!ご、ごめんなさい…」
「あ、いや、そうではなくて。なんて言うかさ」
「はい」
「…それって、楽しい?」
「…はい?」

白井君の視線が、すすすと私から遠ざかった。何か言いづらそうに、眉間をグッと寄せる。

「相原さんは俺のファン?なんかやってて楽しいの?」
「楽しいよ!」

間髪入れずに返した答え。食い気味に飛び出した私の思いは、「楽しいし嬉しい!」「むしろありがたい!」と、ポンポン続いて飛び出してくる。随分深刻そうに何の話をするのかと思ってからのまさかのそんな事かと、ホッとしたせいだった。そしてそんな私はきっと驚くくらいのアホ面で、信じられないくらいにバカな事を言っていたんだと思う。白井君は私ともう一度目を合わせてくれた瞬間、とっても呆れたんだと思う。

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