白井君の慰め方
私の事だ、と分かる前から口は動いていた。ゆっくり寄って来た彼の動きを見て自分の事だという自覚を持って、今彼は私を慰めてくれようとしてるのだと理解して、
「…手を握ってくれたら、良いと思う」
欲が出た私の言葉に促されるまま、膝の上で固まっていた私の手に一回り大きな掌が包み込むように重なった。遠慮がちな力加減で触れられた所から、ジワっと温もりが身体中に伝わっていくような気がした。白井君の思いやりが私の中に染み渡っていくような…
「……なんでまた泣くの?」
心底不思議そうにする白井君の隣で、また私の涙はボロボロとこぼれ落ちた。だって温かかった。温かさが、
「沁みたんだもん」
「しみた?…痛いって事?」
パッと手を離した白井君は、ジッと私の手を確認している。きっと傷の部分に触れてしまったとでも思ったのだろう。何も無い私の手を見てまたも首を傾げている彼を見たら、なんだか可笑しくなって、笑いを堪える事が出来なかった。なんで笑うの?と、文句有り気な視線をビシビシと感じたけれど、そんな事気にならないくらいに笑った。
白井君は素直な人なんだ。どこか抜けていて、不器用な人なんだ。白井君は、
「優しいんだね」
いつのまにか止まった涙と、なんだか軽くなった心に、気分はとてもスッキリしていた。全ての答えが出たような、そんな気分だった。
「ありがとう、とっても慰められた。元気が出たよ」
ヘラヘラと笑ってお礼を言った所でちゃんと伝わらないかなと、ちょっとだけ反省したけれど、
「…それなら良かった」
そう言ってフンっと前を向いてしまった白井君の、髪の毛から覗く彼の耳は真っ赤だった。何事も無かったような顔をしている彼はきっと気づいていないので、この事は私だけの秘密にしておこうと思う。