白井君の慰め方
つまり白井君は私の事なんて眼中にない。それにどうせ私は恋愛に結びついたとしたってその先で良い関係を保つ事が出来ない。だから白井君への恋は不毛で、私の恋は片思いが一番良いと割り切ったのだ。恋をしているような感覚に酔えるだけで満足で、私の想いは恋とは違う他のものなのだと納得して、私の気持ちを正しく表せる言葉を見つられた所だった。そういう事かってやっと上手く白井君への想いを受け入れる事が出来た、ちょうどそんな所だったのに。
「つまり、他の誰かに恋してない私は白井君にとって必要ないって事かな」
「!そんな事ない」
「じゃあ他の人を見ないで白井君を見てる私は気持ち悪い?」
「そんな事っ、そうじゃなくて」
「じゃあなんでそんな風に言う必要があったの?」
無意味とか、もっと大事なものとか、恋をするべきとか、もうなんか全部どうでも良くなってきた。だってよく考えたら意味が分からない。楽しそうな私が好きだって言ってくれたのに、それが恋じゃないといけない意味が分からない。私は今、今までで一番楽しかったのに。
「今の私にとって白井君の事考えるよりも楽しい事なんて無いのに!」
白井君の事以外にもっと大事な事なんて、そんなもの知らない。私は一つの事しか出来ない、そんな簡単に色々出来るならこんな事になってない。
「白井君から見た私なんてどうせ、恋する事しか取り柄がない痛い女ですよ。白井君と一緒に居る為には恋しないといけないんだね、だってそんなの白井君が楽しくないもんね」
「そんな事言ってない、なんでそうなんの」
「そう言ってるよ、だから無意味なんて言ったんでしょ?他の意味がある事って何?白井君の事より大事な事って何?もう私にとって恋愛するよりずっと大事な事なのに!」
「!」
「私が私の為に白井君が好きで白井君の事ずっと考えてて何が悪いの?」
そして、『もう知らない!』っと続けようとしたその時、ギュッと両肩に手を置かれてハッとした。肩に乗る力がこもっている掌が熱い。どんどんヒートアップして空回りを始めていた口がピタリと止まると同時に、頭の熱がスッと引いていった。自分の中で完結し始めていた思考が、意識が、腕を伝って目の前の彼の方へと戻っていく。彼は、白井君は、私を見つめていた。…真っ赤な顔をして。