白井君の慰め方
「なるほど。楽しい時の私ってこんななんだね」
これだけパワフルなんだから、そりゃあ恋多き女と噂になるはずだ。恋してる時、恋話をしてる時の私がバレバレで仕方ない。
「うん。俺と居ても楽しんでくれるならもう、それはそれでありだと思う」
「?」
「ファンってやつ。勿体ない気もするけどさ」
「いや普通にありだよ。ありありだよ」
むしろ恋愛なんていらない。このままずっとこれだけでいい。それくらい白井君の隣は居心地が良いし、私達の関係に適切な名前が見つかったと思っている。
正直、ファンと推しメンの関係だと言われて少し安心した。恋愛に繋がる関係では無く、でもただの友達では満足出来ず、だとしても親友とは違うこの関係がどうあればいいのかが定まってカチリとハマった瞬間、嬉しさ爆発からの大暴走に至った訳だ。私、慎重派だったはずなのに。最近の私は白井君関連の事に対して随分と大胆だ。
「でも今回は逆ギレだもんね、流石にやりすぎだよ…ごめんね。もうなんか自分で自分が怖い。そろそろ歯止めがきかなくなりそう」
「別にいいよ」
「良くない良くない。私は私の知らない私へと変化し始めているんだよ…」
この無遠慮感。女子相手でもここまで発揮出来ないのに、男子相手にこれである。ほぼ考え無しに飛び出すようなこの感じは、正直人生初といっても過言ではない。この陰気な塊の私が空気を読む事すら忘れるなんて考えられない出来事だ。ほんのつい最近までの私とは、大違い。
「…先輩が見たらドン引きすると思う。同一人物だと思われないかも」
「…先輩ね」
私の呟きに、事情を知った顔で白井君が相槌を打つ。前に先輩の話を白井君にした事があった。それがきっかけで私は先輩と話をする決心がついて、結果今の状況が出来上がった訳だから…うん。私が先輩と別れた事なんてそりゃあお見通しなはずだ。恋愛をお休みします宣言しておいて別れていない訳が無い。