白井君の慰め方

本音と建前が誰にでもある



そんなこんなで翌日の今日も、ファンの名を振りかざして部活終わりの待ち伏せを試みるつもりだった。というかもう暇さえあれば白井君を構い倒すくらいの勢いで気持ちがストーカー行為の方向へと振り切っていたはずなのに、朝の待ち伏せを終えた今、私は放課後のそれをする事に対して躊躇している。

私はもう、本当の意味で真っ直ぐファンだと誇りに思う事が出来ない脳みそになってしまった。なぜかというなら勿論、原因はあのしつこくも復活してしまった恋心。抑制した分倍の質量を持って復活した気がするそれは、キラキラがえげつないし、ドキドキワクワクが果てしない。

でもそれだけならまだ良かった。そのキラキラの他にもう一つ生まれてしまった気持ちが物凄く厄介だった。

今朝の事である。昨日と同様、私は朝練直後に鉢合わせるよう待機していた。すると現れた白井君に自然を装う暇も無く挨拶しようと駆け出すと、私より先に白井君に声を掛ける人物が現れた。マネージャーだ。私はピタリと足を止めて、会話は聞こえない程度の距離から二人を眺めていた。

白井君はいつもと変わらない表情。それは彼の標準装備のものだから塩とクールの狭間の無表情に何を思ってるかは分からない。マネージャーさんは先輩女子。何か連絡事でも伝えた感じの業務感。当たり前の光景だ。でも一つ、最後に先輩マネージャーが白井君の肩に手を置いてポンポンした事、それだけが私の心にトゲを作った。

たったそれだけの事。それだけの事なのに、私はそれが気になって仕方なくて、チクチクしたものがドロドロと重くなって胸をムカムカとさせるのだ。…流石にやばいと思う。私の心、狭過ぎると思う。こんな気持ちを抱いたままで、どうやって放課後の彼を待ち伏せ出来ようか。

「…もしかして私って、嫉妬深いのかもしれない」
「昨日の純粋はどこへ?」
「そんなの私が聞きたいよ…」
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