白井君の慰め方
今朝だって結局挨拶もしないで逃げたのだ。昨日までの私と同じ対応が果たしてこの後彼を前にして出来るのだろうか。どうにか彼を傷付ける事も無く、自然に楽しく時を過ごす事が可能かどうかと言われると…答えは限りなくノーに、近いような…
……うん。今日は帰ろう。
後一時間もすれば部活は終わるけど、それを待たずに教室を出る事にした。少しでも傷つけてしまう可能性があるのなら、やっぱり一回間を置いて冷静になるべきだと思った。ましてや昨日の今日な訳だし…
「あ。もしかして相原さん?」
「!」
急に後ろから声を掛けられて、驚いて足を止める。パタパタ走る音が近づいて来て、横から覗き込んできた彼と目が合って再度びっくりした。
「いえーい当たりー」と、ニコニコして言うその人は、入学してから一度も話した事は無いけれど存在も名前も一人歩きするような目立つ人で、確かバスケ部の部員の一人の…
「あれ、帰んのまだ早くない?白井待たないの?」
「!なんでそれを…?」
「いや、昨日の帰り居たっていうからさ、今日も居んのかと思って。俺昨日病院行ってて居なかったんだよね」
「……」
「でも今日も早く上がんなきゃでさ。それなのに宿題忘れて戻る羽目だよ。やってらんねーとか思ったらのまさかの相原さん」
「……」
「ねぇ、部活入ってないのにまだ残ってんのなんてもう相原さんくらいだよ。やっぱ白井待ち説濃厚?」
「……」
何故ここに至るまでの経緯を説明されたのか。何故興味深々の顔で私を見るのか。何故初対面の私にこうも心を開いた話し方が出来るのか。
もうなんか陰気でコミュ障の私にはカースト上位のモテメンのキラキラは眩しくて辛い……正直に言おう。この人は先輩と似ているのだ。つまり外見やら雰囲気やらが割とタイプ…いやっ、別に好きになったりはしないけど!絶対しないけど!でもあるじゃん、好みな人って急にいつもと違う自分が反応しちゃうっていうか…つまり私、今とても緊張している。