白井君の慰め方

「？どうしたの？」
「……」

反応に困る。どうしたのなんてこっちのセリフだ。

「あぁ、やっぱ白井に振られたってほんと？」
「……」

その瞬間、私の中でさぁーっと彼への好意的なものが物凄い勢いで薄れていくのが分かった。振られたのは本当だけど、ここで放り込んでくる度胸がすごい。この一言で私のあ、苦手だセンサーが発動した。好みなのは外見だけのやつだ。先輩は年上な分もっと気遣いの出来るイケメンだった。

「じゃあ振られても諦めずに押してくやつか。スゲー」
「……か、」
「か？」
「帰ります」

馬鹿にされてるのがよーく分かった。スゲーってなんだ。痛い女なのは分かってるけど流石にムカつく。次元が違う人だからって簡単に人を傷つけて良い訳がない。こんな陰キャを捕まえてなんて酷い事をする人なんだ。

当然ここでおしまいですと、足早に通り過ぎようとした。けれど、はっと気がついた。もしかしたらこのまま帰る訳にはいかないかもしれない。

「っ、あの」
「？」
「私、白井君のファンなんで」
「…は？」
「白井君は人の恋愛感情を無視するような人ではありません。ファンだから許してくれてるってだけです」

私が白井君に纏わり付く気持ち悪い女なのは事実だ。でももしそんな私を白井君が利用していると思われたら大変だ。私が白井君をそう思っていないからこそ許される関係なんだという事はきちんと説明しておかなければ。普通片思いされてる女に出待ちされていたらとてつもなく気味悪い出来事なのだから、受け入れてる白井君が可笑しな人に思われたら大変だ。