白井君の慰め方

「私が私の都合でやってる事なので、白井君は被害者です!」

そして、今度こそさようならの気持ちで足を踏み出した。絶対に追いつかれない、声も掛けられないスピードの早歩きだ。「は?」とか、「へ?」とか、戸惑ってる声は聞こえていた。けれど無視だ。これ以上はボロが出る。

結果、後ろの彼からこれ以上声を掛けられる事は無く、無事に校舎を出て帰路に着く事が出来た。良かった、ほんとに良かった。だって、

「ひ、被害者ですってなんだ…!」

なんて突っ込みどころ満載な言葉なんだ。こんな言い方するつもりは無かったけれど、もう言ってしまった。言ってしまったからには仕方ないものの、それにしても必要以上に気持ち悪い事になってしまった気がする…これだからコミュ症は。いざと言う時の言葉の作り方の下手さよ。

「明日からどんな顔して白井君に会えばいいの…」

絶望の淵に佇む私のこの気持ちを誰が分かってくれるだろうか。とりあえず明日の朝は普通にいつもの時間で学校に行こうと思う。あの人が朝練に出て白井君に何を言うか分からないから…その直後での遭遇だけは避けなくては…



< 62 / 120 >

この作品をシェア

pagetop