白井君の慰め方
「?だーれだ?」
「……」
「だれでしょーう」
「……」
「え、ガン無視?」
「………三嶋君」
三嶋 崇人(みしま たかと)。そう、それが皆が皆知っている筈の昨日のあの人…いや、今なぜか私に絡んでくるこの人の名前。
「せいかーい」
視界を覆っていた掌は私の両肩へと移動して、後ろから顔を覗き込んでくる。流石バスケ部とだけあって背が高い。白井君くらい高いから、横からというより上から覗き込まれたような気持ちだ。そして何故かめちゃくちゃにニッコニコである。謎過ぎる。
「こんな所で会えるなんて奇遇だねー」
「……」
「あ、でもここ白井のクラスの前かー、そりゃあファンの相原さんが居ても仕方ないかー!」
「……」
ななな、何なんだろう一体この人は。何故そんな事をそんなテンションで今この場で言うのだろう。なんで?何がそんなに楽しいのか分からないけど、なんかめっちゃくちゃに笑ってるんだけど。私は先も理由も読めなくてヒヤヒヤしてるんだけど。
「わはは!相原さん顔やばー。どういう心境なのそれ」なんて言われても私も私の心が言語化出来ない。またいつものダンマリですかって言われた先輩の言葉が蘇る程には答えが見つからない。
「?ねぇ相原さーん」
「……」
「シカトっすか?」
「…ごめんなさい、頭が追いつかなくて」
「何に?」
「この現状に」
「現状って」
「何かご用でしょうか?」
「なぜに敬語?」
ニヤニヤしながら正面に回って首を傾げる彼の茶髪がサラリと流れる。うっ、なんか輝きが…これがモテメンの力か、視界に入れるべからず。私は割と顔面に弱い。先輩に似ている彼からは距離をおきたい。中身は違うのでと口に出して戒めたい。