白井君の慰め方

そして思いついた最後の一つが、先輩と距離を置く事…なんていっても、距離を置くも何も、今までだって先輩からの接触待ちみたいなものなのに。朝と帰りの電車で一緒になった時と、たまに帰りに一緒にカフェに寄るくらい。今までだってそんなものなのに、距離を置くって一体…結局私って先輩にとっての何なんだろう。私達の今までって何だったんだろう。

考えるほどにショックを受ける自分すらおこがましいような気持ちになって、そっと気持ちに蓋をする事にした。これはもう、私から何か行動を起こすものでは無いのかもしれない。私が何をしようと何を想おうと無意味なのかも。というかこれだけごちゃごちゃ考えても結局の所、私が先輩の事を好きでいる限り、先輩と別れるという選択肢は存在しないようなものなのだ。先輩が切り出してくれるの待ち。先輩に飽きられるの待ち…それはそれで悲しいけれど、仕方ない。だって私は先輩が好きなんだから。自分から無関係になるきっかけを切り出せない。

どんよりと落ち込んだ気分で今日も朝の電車に揺られる。あれから先輩には会えてないし、連絡もとってない。毎日連絡し合うタイプでは無かったので、逆に連絡するきっかけを掴めないでいた。先輩から連絡が来ない事なんて今までだってあったのに、それなのに今回に限って自然消滅の言葉ばかりがチラついて仕方がなかった。そうか自然消滅。それも選択肢の一つか…

「お、久し振りの楓ちゃんじゃん」

「おはよう〜」と、現れた明るい声の人物に、思わずビクッと身体が跳ねた。まさかこの声は、

「おはようございます、お久し振りです…」

先輩だ。最近では連絡も取り合ってなかった先輩が、今までと何も変わらない…あの日の前までと変わらないままで、現れた。

「楓ちゃんってこの時間の電車だったんだ」
「…朝会うなんて珍しいですもんね」
「今日は予定があってさ。いつもはもっと遅いか早いかだもんな」

< 7 / 120 >

この作品をシェア

pagetop