白井君の慰め方

ありがとうと返すのは、私にとって至極当然の反応だった。

誰だって人から好きだと言われたら嬉しいでしょう?それ。大好きな人に言われたなんてもう、考える間もなく込み上げるでしょう?それ。よく分かんないけど有難く感じているから言葉にしようと、あの時の答えは私にとってはそういった類のものだった。

だってあんな世紀の大発見みたいに感動されたら、私のような白井君バカは圧倒させて思考放棄だ。そんな顔初めて見た、嬉しそうにしてる、私嫌われてないんだね嬉しい!的な流れ以外ない。だから白井君の言葉のアレコレなんて一切気にもとめていなかった。

だからだろう。だからなんだか、それから可笑しな事になった。

翌日の私はまた、前回同様夢見心地でぼんやりと、のんびりした時間に登校した訳だけど、下駄箱で靴を履き替えて校舎に入ったそこで事件は起こった。

「おはよう」
「おはよ…し、白井君?!」

こんな時間に居るはずの無いその人に、「どうしたの??」と、思わず駆け寄った。だってバスケ部は今日も朝練があったはず。こんな時間にこんな所に白井君が居るはずないのだ。

もしかして何か大変な事でも起こったのかも!なんて所まで一瞬で思考は飛び、何か出来る事はないかと聞こうとした。がしかし、当の本人はなんでそんなに驚いてるの?とでも言いたげに首を傾げて私を見ている。え?なんで?

「相原さんを待ってただけだよ」
「私?あ、大至急私に用があったって事?私何かしちゃった?」
「いや別に」
「別に?」
「何も」
「何も…何もか…」

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